飲食する場所が、飲食店だけでなく、自宅でも勤務先でも、公園などの指定した場所でも、フードデリバリー・サービスのおかげで、食べたい時に食べたい場所で食べられる時代がやってきました。この流れは、コロナ以前から拡大しつつありましたが、コロナ禍において一気に加速しています。
料理を提供する側にとっては、「客単価 x 席数 x 回転数」で決まる飲食店の売上を、席数を気にすることなく上げるチャンスがある、そんな働き方が選べるようになったと言えます。もっと言うと、席はなくてもいい、キッチンさえあれば、フードデリバリーを活用して飲食ビジネスを行うことができるようになりました。
このような、イートイン(食べる場所)のないキッチンのみのスペースは「クラウドキッチン」と呼ばれています。会社に属することなくフリーで、働きたい時に働きたい場所で仕事をする人たちのプラットフォームであるクラウドソーシングの飲食店版と言えるかもしれません。
アメリカ発祥のこの形態は、海外では「ゴーストキッチン」「ダークキッチン」「バーチャルキッチン」などと呼ばれ、このような業態で運営される飲食店は「ゴーストレストラン」「バーチャルレストラン」と呼ばれています。既存の飲食店が、敢えてそこで提供しているのとは異なるブランドやメニューをフードデリバリーでのみ提供する場合、つまりお店はあるが存在がフードデリバリーでしか見えないものも、「ゴーストレストラン」「バーチャルレストラン」になります。
従来からの飲食店にもクラウドキッチンにもそれぞれ良さがありますが、比較してみると、こんな違いがあるのではないでしょうか。
飲食店のメリット (クラウドキッチンでは難しいこと、できないこと)
料理だけでなく店内装飾や食器なども含めてコンセプトを作れる
盛り付けの工夫がしやすい(運ぶ制約がない)
できたてや熱々が美味しい料理を提供しやすい
料理人と接客スタッフのチームで店を作りあげる楽しさを作れる
料理へのフィードバックを目で確認できる(食べている時の様子、残し方など)
顧客や地域とのふれあいが持てる
クラウドキッチンのメリット
開業資金が安くて済む
開業までの期間が短くて済む
開業までの手間が少なくて済む
接客スタッフのコストが不要
1キッチンで複数のブランドを持つことができる
データが取れるので分析ができる(何時に何がよく売れるなど)
メニューを変えるのが簡単
好きな時に休みやすい(アプリで設定するだけ)
いずれは飲食店を作りたい人にとっては、開業の敷居の低いクラウドキッチンでの運営をテストマーケティングと位置づけるという活用方法もあるでしょう。
いずれにせよ、飲食業における選択肢が広がり、多様な働き方が可能になるのは歓迎すべきことですね。
さて、クラウドキッチンにとって、上記のメリットを享受するためにフードデリバリーは欠かせませんが、「運んでもらえる」以外にも実は重要な役割があります。それはフードデリバリーのアプリが、営業・マーケティング活動をしてくれることです。
デリバリー前提のクラウドキッチンは、必ずしも飲食店のように駅前などの一等地にある必要はなく、路面にすらなくビルの上階でもよいので、そこでコストを抑えることができます。在宅勤務の普及でオフィスの解約が増えた不動産業や、宿泊者の減少に悩む民泊業が、新たなスペース有効活用として注目しているポイントのひとつでもあります。
そんな外からはわかりづらい場所にあっても注文が取れるのは、フードデリバリーのアプリで料理や店の名前を見つけてもらえるからと言えます。アプリの利用者にとっては、その場でデリバリーの注文をしなかったとしても、近所にこんなお店があったんだと気づくきっかけにもなり、新着店舗や今割引のある料理があれば違うものを食べようと思っていた人も今日はこれにしようと心変わりするかもしれません。
登録するデリバリーサービスの配達エリアがどんな場所か、どのくらいのユーザーが使っているのか、アプリにはどんな仕組みがあるのかを理解し、どうすると数あるメニューの中で選ばれ注文してもらえるかなど作戦を立てて、新しい働き方の一歩を踏み出すきっかけとしてみてはいかがでしょうか。
クラウドキッチン情報サイト「Green Dining Kitchen」 https://www.greendining-kitchen.com
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