フードデリバリー需要が増加する中、デリバリー向けクラウドキッチンが次々にオープンしています。今回は「飲食店開業のリスクが最も低いキッチン」を目指してデリバリー向け飲食店開業を支援する「Coworking Kitchens松戸」(千葉県松戸市)を訪問し、運営責任者の西沢さんにGreen Dining Kitchenスタッフが取材しました。
Coworking Kitchens松戸オープンのきっかけ
Coworking Kitchens松戸を所有する株式会社あきない総合研究所(以下、あきない総研)は、もともとベンチャー企業支援や起業家支援を行っており、その支援事業のひとつとして2021年3月にデリバリーレストランの開業に特化したシェアキッチンスペース事業をオープンしました。人々のライフスタイルの変化や環境の変化に伴い、海外でもデリバリー需要が急速に増えていることに注目し、ニューヨーク視察で現地視察の計画もしていた、とのこと。「日本へその流れが来ることを感じ取っていた」と言います。
ただ、開業支援と言っても、通常飲食店開業には初期費用がかかります。まずは、そのハードルを下げることを目指し、入居費用を抑えたプランでサービス提供することにしました。設備、厨房機器が揃っているので、用意するのは「レシピ」と「想い」と「料理をする人」というコンセプトで料理人を支援しています。
Coworking Kitchens松戸の特徴
インタビューでは、いくつかの特徴をお話されていましたが、主に下記3点が挙げられます。
1) 地元に開かれた拠点を目指す
クラウドキッチンは、通常、デリバリープラットフォーム(出前館、UberEats等)で販売する料理を作る場となっているため、通常の飲食店のように目抜き通りにある必要がなく、人通りから離れた場所に存在していることも多くあります。しかし、このクラウドキッチンでは「キッチンやそこで働く料理人のことをもっと地元の人にも知ってもらい、地元の人にそこで作られている料理を楽しんでもらうことを大切にしている」とのこと。
そのため、キッチンは、あえて交通量の多い路面に作り、クラウドキッチンでは通常見られないイートインスペースも設けています。通りがかりの人が「ここは何屋さん?」と聞きに来ることもあるとか。「デリバリー向けのクラウドキッチンです」と説明すると「ん?クラウドキッチンってなに?」という回答が来ることもしばしばだそう。「もっと、地元の人にも知って、活用してもらうと同時に、この業界そのものの認知度を広めて盛り上げて行きたい」との想いで活動されています。
2) メンバーと一緒に成長したい
「入居したら終わり」という不動産賃貸型のクラウドキッチンではなく、「入居したメンバーと一緒に事業成長させたい」と西沢さんは話します。そのために、講師を呼んでのデリバリーの勉強会やセミナーの開催を行っています。また、あきない総研の負担で入居者のための共同販促チラシを作り、近所に配布するなど、マーケティング活動を担い、売上を上げるためにできることを積極的に行っているそうです。
3) 入居形態の選択が可能
Coworking Kitchens松戸の入居形態は2種類用意されています。継続的なデリバリー用のクラウドキッチンとしての「月額で使える完全個室キッチン」と、EC販売やテストキッチンとしての「時間貸しキッチン」です。これにより、クラウドキッチンを利用したいさまざまなニーズに幅広く応えることができます。どちらも飲食店営業許可が取得可能な作りのキッチンで、24時間利用が可能なので、夜中の仕込みにも使えます。レシピ開発や新しいメニューを販売してみたい、仲間とレシピの研究をしたい、など、まずは行動したい!という人に気軽に利用できるようになっています。
現在の入居者について
現在月額で借りている入居者は3社とも飲食業を既に営んでいる会社とのこと。現在運営している店舗とは別の拠点として「新しくオープンしたもうひとつの拠点」という位置づけで借りているとか。クラウドキッチンの利点である「何が売れるのか」を試して、やめて、また試す、というテスト的に使っているキッチンも。丼ものが一日100食近く売れた店舗もあり、出だしは好調。1社で8ブランドを回しているキッチンもあり、その中には自社ブランドの商品もあれば、フランチャイズを活用しているキッチンもある、とのこと。「注文が入ってから配達員が5分ほどで取りにくるので3分で美味しい料理を作らなくてはならないため、下ごしらえや事前準備が勝負どころ」と入居中の料理人が笑顔で語ってくれました。
時間貸し100人募集キャンペーン中
時間貸しについては、もっと活用してもらいたいとのことで、11月現在、100人募集のキャンペーンを展開中です。6ヶ月の利用料が半額という特典があります。
取材を終えて
Green Diningでは、これまで、いろいろなクラウドキッチンを訪問してきましたが、Coworking Kitchens松戸の運営管理者と入居者、また、入居者同士のコミュニケーションの良さが印象的でした。「忙しいながらもお互いのキッチンが情報交換をしたり、忙しい時は他のキッチンのちょっとしたお手伝いをすることもある」とのこと。私達が訪問した時もそのほんわかした光景が見られました。「この事業はまだまだ確固たる形が出来上がっている事業ではない。だからこそ、切磋琢磨しながらも、関係者同士がコミュニケーション良く活動できる環境を作れたら、と思っています」とおっしゃっていました。
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