飲食店をオープンしたいけど、まずは資金を貯めたい、オープン前に商品をテストマーケティングしてみたい、本格運用する前にお客様からフィードバックをもらいたい等の理由でまずは、シェアキッチンの利用を検討している方もいらっしゃると思います。そんなシェフの参考になればと、実際にシェアキッチン利用者に利用してみてどうだったかインタビューを行いました。一例としてご覧下さい。
シェアキッチン利用者:カフェ「River」新川兄虎(あらかわけいご)さん
利用期間:2021年1月〜3月の毎週金、土曜日
取扱商品:こだわりの焙煎コーヒー、カフェオレなどドリンク類、手作りクッキーやパウンドケーキ
施設場所:沖縄県沖縄市 創業支援施設「Startup Lab Lagoon」内のシェアキッチン
施設概要:創業やマーケティング、IT系の書籍、プリンター、相談ブースなどがあり、起業、勉強したい人向けの利用スペース、そこにカフェが常設しているタイプで全体の席数でいうと40〜50名程度
シェアキッチン利用の目的を教えて下さい。
将来の独立・開業のための準備と経営を経験したいということ、また本格的にコーヒーの勉強がしたい、というのが主な目的です。
きっかけはなんですか。
これまで飲食や接客に携わる仕事を複数経験し、将来的には自分でもお店をオープンしたいという気持ちで、様々な勉強をしていました。そんな時にシェアキッチンの存在を知り「こういう場所で勉強の合間にコーヒーとおやつを楽しみながら一息つける空間があればいいな」と思ったのがきっかけです。シェアキッチンのトライアル利用も最初は不安がありましたが、将来の最終目標を具体的にイメージし、目の前にあるシェアキッチン開業は通過点というふうに考え、気負わずにチャレンジしてみることにしました。自分の誕生日を節目に応募を決意しました。
このシェアキッチンに決めた理由
飲食営業許可があったことをはじめ、創業支援施設ということで、オープン前、オープン後もサポート体制があったこと、利用は4ヶ月プランのみですが、料金的にも利用しやすいという点です。また、沖縄市は沖縄県の中で那覇市についで大きな市であり、その中心地で人口も多い街の一角であるということで立地的にも魅力的だと思いました。
オープン前の準備期間と内容を教えて下さい
利用が4ヶ月と決められていたので、準備期間を1ヶ月、店舗運営を3ヶ月とし、準備期間は、段取りを考えることと提供する商品作成に時間を費やしました。
メインのターゲットを施設利用者とし、コーヒー等ドリンク中心のメニューとしました。
コーヒーにこだわり、豆の調査やレシピ研究、原価計算を重ね、その合間に、食品衛生責任者資格、冷蔵庫、コンロ以外の備品を揃えるといったことを行いました。
利用が短期、コロナ禍ということもあり、提供するカップは使い捨てにしました。
ゼロから初めたので、想像できない点も多く、備品や実際の店舗運営については、勤務していたカフェの実店舗の方にアドバイスをもらいながら準備し、1月にオープンすることができました。周りの方の助けも有り、思ったよりスムーズにいったと思います。
準備期間1ヶ月でオープンは慌ただしいイメージですが、オープン後はどうでしたか?
始めの1ヶ月間は、開店〜閉店まで、また注文〜お客様へ提供するまでの一連の流れを、段取りを考えながら行ったので慣れるまでが難しかったです。
基本的に一人で運営しているのですが、最近では知人や同業者、開業予定の人などが見学や勉強をかねて手伝いに来てくれます。
取扱商品も、少ない数から始め、徐々に増やしていく予定だったのでそれほどバタバタすることはありませんでした。
集客状況について
お客様は知人や施設利用者などで、多くはないです。
集客については、事前告知をしていなかったこと、コロナ禍であること、場所が創業支援施設内ということで通りがかりに入る人が少ない、という要素が重なり、思ったより少ない状況です。
これについては、オープン後に施設のかたにサポートしていただきながらSNSで発信したり、店舗前に看板を設置するなど、まずはカフェの存在を知ってもらうという活動を継続して行っています。
SNSはストーリーに投稿した場合に反響が多いです。これまでほとんど発信してこなかったので、投稿し続けることが大事だと痛感しました。
取扱商品を教えて下さい
メインのターゲットを施設利用者にしているのでドリンク中心にしました。
コーヒー、金木犀の烏龍茶、ココア、アールグレイソーダの4種類からはじめ
開店後にレシピ研究やお客様の声を取り入れて、カフェラテ、エスプレッソアフォガートを追加して、現在6種類です。
沖縄では珍しい甘みのある金木犀の烏龍茶や、スリランカ産の茶葉とベルガモットの香りが高いアールグレイを使ったソーダなど、他店舗ではなかなか味わえない商品をおいています。
特にアールグレイソーダは、ロングリーフと言われる大きな茶葉を使ったもので、極上の香りとあっさりした甘み、微炭酸で大人の炭酸飲料といった感じに仕上がっています。
飲み物だけでなく、国内産原料にこだわった乳製品不使用のクッキーやパウンドケーキも取り寄せて販売しています。
お客さんの反応はどうですか?
商品を絞り込んでいるということもあり、概ねどの商品も好評で、リピートしてくれる方や常連さんもできました。初めてのお客様には、提供後に声をかけて積極的にコミュニケーションをとり、フィードバックももらうようにしています。
また、本格開業前のシェアキッチン利用だからだと思いますが、お客さまが提案をしてくれる場合もあります。
例えば、最初は紙コップで提供していたアイスコーヒーは、お客様から「透明のカップがいいのでは?」や「カップそのままだとさみしい」などの声があり、カップを透明にし、ロゴを貼るなど、日々改善を続けています。
お客様の中には応援してくれる方も出てきて、イメージアップの為にと店頭の置くためにコーヒーの木をプレゼントしてくれた方もありました。
そういう事も含め、シェアキッチンでのお客様とのふれあいはとてもいい経験になっています。
反省点、良かった点
現時点では、圧倒的に準備期間が短かったというのが反省点です。
1ヶ月という短い期間だったので、店舗まわりの客層、ターゲットなどの実態調査が行えず、SNSや口コミなど宣伝も事前にやっておくべきだったと反省しています。お店を初めてあらためて、準備期間の大切さを痛感しました。
事前の宣伝不足や時期的な問題(新型コロナの影響)で、集客が思ったようにいきませんでしたが、それ以上に、短期間でもやってみたことで得たものは非常に大きかったです。
良かった点の一番は、やはりお客様を始め人とのつながりができたことです。
雇用されているときには感じなかった、自分で企画した商品を売る、お客様に喜んでもらう、ということにお金以上の価値を感じました。
まだ2ヶ月ですが、お客様や人との出会い、応援してくれる方などもできました。それが今後も大切な財産になると思い日々感謝しています。
また、経営が経験できたこと、0から1にしたという点、商品や販売の企画はとても楽しく感じ、それらはすべていい勉強になっています。
反省点も含めて気づきがたくさんあり、全体としてプラスになっているので、
開業を迷っている方には、ぜひシェアキッチンの利用をおすすめします。
今後はどうしたいですか
数年のうちに、カフェをオープンさせたいです。
鍼灸師の資格ももっているので、鍼灸院に併設したカフェ(ミクストラン)も視野に入れています。鍼灸院に通っていた方が治療したらそこで終わりでなく、カフェがコミュニケーションの場となり、縁が繋がる場所があればいいと思いました。
現段階では、それが直近の目標の一つですが、飲食を含む店舗の経営や投資など経て自分のイメージする場所を作ることが最終目標です。
今回は、
シェアキッチン利用で数年後の開業を見据えた経営の勉強、そしてコーヒーの勉強がしたい、という新川さんにお話をお伺いしました。
こだわりのコーヒーは、遠方まで足を運び、
豆を仕入れ、毎日試行錯誤と研究を重ねている、と
コーヒーに対する情熱も垣間見えました。
このサイトでは、シェアキッチン情報を更新しています。興味がある方はこちらも御覧ください。
Comments